ジュニア文庫とライトノベルの定義
ジュニア文庫創刊年表(このページの下)
(一部、作品リストつき)
ジュニア文庫の周辺文庫
ジュニア文庫あれこれ
もちろん、別に呼び方が何でも、本そのものが変化するわけではありません。
ただ、ここでは便宜上、「ジュニア文庫」を、次のように定義しています。
・版型が文庫サイズであるもの
ジュニア小説には、新書版、単行本版もありますが、ここでは厳密に、サイズとしての文庫版を選びました。ですから、児童文学系の会社から出ている「××文庫」も、文庫版でなければとりあげてはいません。
これは、要するに全てを集めようとするときりがないので、絞っただけで、ジュニア小説そのものの定義とは関係ありません。
・主に中学生・高校生をターゲットとしたと思われるレーベル
そんなこと、どうして分かるんだ、と言われると困りますが、雰囲気です。いちおうジュニア作家としては、分かる……と思ってるんですが。
あと、他に一般向けの文庫を持っている会社が多いので、その場合は、明らかに分けることができるでしょう。
最近の「ライトノベル」本の中では、年表の中に、例えばハヤカワ文庫JAなどを入れているものもありますが、私はそういう「拡散」には反対ですので、中高生向け、にこだわりたいと思います。
・いわゆる「ボーイズラブ」については除く。
除く理由は、私が集めきれず、読み切れないからで(正直に言うと、まったく読めません)、特に差別しているわけではありません。
また、三笠文庫のような、海外翻訳の文庫があったらしいことが分かりましたので、
・日本作家のオリジナル小説を中心とする(ノヴェライズも含む)
という定義も必要かと思われます。
なお、文庫本のページの作成者の方からは、「スケバン文庫」はジュニア文庫ではないのか、というご質問をいただきました。
「スケバン文庫」は、不良少女に関するノンフィクションを中心とした、特殊な文庫シリーズで、成立事情などがまだあまり分かってはおりません。
分かっているお話については、別にまとめる予定です。
「ジュニア文庫」の定義を云々し始めると、定義論になりますが(あるいは、「ライトノベルとは何か」論になりますが)、今までの経験から、そのような議論は、ワタクシとしては無駄だ、と考えております。よって、そういうお話が来ても、お答えしませんので、悪しからず。
要するに、私の考えているジュニア文庫をリストアップし、提示することで、「ジュニア文庫」観が自ずと明らかになると思っております。
<#NENPYOU>
リンクがあるものをクリックすると、それぞれの文庫のリストに飛びます。
現在は書目だけですが、最終的には、内容の簡単なガイドになるよう、がんばってみたいと思います。
なお、リニューアルのために内容を書き直している最中ですので、個々の文庫の説明は、まだ詳しくは載っていません。仮開店とお考え下さい。
★1973 秋元文庫(秋元書房)1986頃休刊
いわゆるジュニア文庫の始まり。多くの「ライトノベル」本がこの文庫を無視しているのは、不可解だが、現在の「ライトノベル」の基礎は、ここで出来ている、と私は考えます。詳しい解説は、今後載せていきます。
★1975 ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)2007年休刊→2008朝日ノベルスへ
朝日ソノラマがそれ以前に発行していたジュニア小説(単行本)を母胎に始めた文庫シリーズ(詳細は未調査)。主に男性読者向け(少女小説も初期にあります)
ちなみに、単行本は、「ヤングシリーズ」または「サンヤング」と表記のあるもので、初期のソノラマ文庫にそのまま収録された作品もあり(『北北東を警戒せよ』など)、されていない作品もあります(『オヨヨ島の冒険』など)。
この文庫の第1巻が『宇宙戦艦ヤマト』であったことなどから、これを「ライトノベル」の始まりとしている年表もありますが、ソノラマ文庫を創立した石井進さんのお話では、秋元文庫の売れ行きが大変よかったので、「やらなければならない」という感じだったそうで、秋元文庫との関連は強いものと考えます。
長いこと続いてきたソノラマ文庫も、朝日ソノラマと同時に息絶えましたが、一部のシリーズなどは、朝日新聞社からノベルスで出ています。
★1976 (小学館文庫)
小学館のマンガシリーズ。ここでは小説に絞ったため、調べていません。
★1976 集英社文庫・コバルトシリーズ
少女小説文庫の草分け。コバルト文庫と呼ばれるが、少なくともある時期までは、集英社文庫の一シリーズでした。現在は、主にノヴェライズを扱うコバルト・ピンキーなどもあります。
★1976 角川ジュブナイルシリーズ
詳細は未調査。ジュニア文庫というよりは、角川文庫の中の一シリーズです。同じようなものに、徳間文庫コスモス版などがあり、まだ調べる必要があるようです。
★1980 ポケットメイツ(文化出版局)【廃刊】1982
初めて、ノヴェライズを前面に出してきたシリーズ、と言っていいかと思います。岬兄悟、難波弘之などのオリジナルSFもあります。
★1981 (アニメ文庫)(ソノラマ)【廃刊】?
アニメに関する雑多な本。小説は、ないようです。
★1982 アニメージュ文庫(徳間書店)1994?
※小説以外のものについては、2010年まで存続を確認
徳間書店の雑誌『アニメージュ』編集部が編集した文庫シリーズ。「徳間文庫」は、文庫編集部が担当しているため、異なるものと言えます。
アニメージュ文庫には、小説以外にヴィジュアル、エッセイなどが含まれますが、当博物館では、今のところ小説に絞って集めています。
★1984 (双葉社アニメ文庫)
アニメコミック(アニメのコマをマンガの形に構成したもの)、ゲームブックなどが主ですが、『ルパン三世』シリーズの中では、小説もあるのでは? という疑問があります。書目は調査中。
★1984 投稿文庫(発行・少年社 発売・雪渓書房)
詳細不明です。
※2000.12.18 追記
とんとかいもさんという方から、情報をいただきました。どうもありがとうございます。
初めまして、「文庫の名簿」というページを持っている「とんとかいも」というものです。ジュニア文庫のページを拝見しました。充実したページに感心しました。
ところで「投稿文庫」(少年社)について詳細不明とされていますが、手許に1号がありますのでわかることをお知らせします。第1号は1984年7月5日発売、隔月5日に発行とのこと。帯には「あなたの文章が文庫本になる」と謳い、投稿を募集しています。「創刊にあたって」というページに趣旨や投稿のテーマ等が述べられていますが、人間観、人生観、世界観その他ということで、詩や短文を募集しています。要するに投稿された原稿をもとに文庫本を出して行こうということで、おもしろい試みだと思いますが、1号を見る限りジュニアといっても二十歳前後の人の文章です。
文庫名は「投稿文庫『ワーラ』」でワーラというのは、三重苦の聖人といわれるへレンケラーが最初に発した言葉でWATERとのこと。何号出たのかはわかりませんが、3号までは確認しています。なお発行人が少年社、発売は雪渓書房です。
貴方のページご発展をおいのりします。
とんとかいも
たしかに面白い趣旨だと思います。どの程度、流通したものなのでしょうね。
付記:石川誠壱さんのお話では、7号まで見たことがある、ということです。
★1984 (宇宙船文庫)(ソノラマ)
未調査ですが、雑誌『宇宙船』編集部が編集したものと思われます。映像関係の本です。シナリオ集を3冊確認
★1984 講談社X文庫 ?
このシリーズは、ノヴェライズやエッセイなどを中心とした「旧X文庫」と、少女小説の「X文庫ティーンズハート」、少し年齢層を上に取った小説「X文庫ホワイトハート」などに分けられます。
「旧X文庫」は、仮に命名したもので、私の周りの人間が便宜的に使っています。それに限定した旧X文庫リストを上げました。
★1984 ソノラマ文庫海外シリーズ ?
海外SFの翻訳シリーズ。詳細はまだ調べていません。
★1985 富士見ドラゴンブック(富士見書房)【存続】
詳細は調査中です。ゲーム関連のレーベルと思われますが、「シュタインズ・ゲート」の小説が入手できました。
★1986 富士見文庫(通称:富士見美少女文庫)1993
富士見文庫の中にも、ジュニアと考えていい作品がいくつかあります。『くりいむレモン』のノヴェライズ(倉田悠子)の他に、オリジナルも見られます。
★1987 講談社X文庫ティーンズハート(講談社)2006
講談社X文庫が路線変更した少女文庫のシリーズですが(なので、旧X文庫と通し番号になっていました)、ジュニア文庫を「パッケージ商品」に変え、年少者の読書量調査にも影響を与えた画期的なシリーズです。ピンクの背の物量攻勢だけではなく、数々の作家を輩出しました。
★1987 角川文庫・青(角川書店)→スニーカー文庫
現在のスニーカー文庫は、最初に「角川文庫・青版」という一シリーズとして誕生しました。
その後、レーベルが独立し、スニーカー文庫、更にルビー文庫がそこから派生します。
現在('2001)は更に、ビーンズ文庫も誕生しました。
★1987 アルゴ文庫(光風社出版)1988?
ほぼ全冊が確定しましたが、リストは少々お待ち下さい。
★1988 ケイブンシャ文庫コスモティーンズ(剄文社)1989
コスモティーンズは、ジュニア小説バブルの時期に、勁文社が、最初はホラーのシリーズとして始めました。後に、少女小説をも含むようになります。
★1988 富士見ファンタジア文庫(富士見書房)【存続】
現在も続く、ファンタジイを中心にしたシリーズ。
★1989 角川スニーカー文庫(角川書店)【存続】
ティーンズハートの成功に刺激されたのではないかと思いますが、角川文庫・青版は、独立したレーベルになりました。初期は少年向け・少女向け、両方を含んでいましたが、のちに主に少年向けに変わります。
★1989 徳間文庫パステルシリーズ(徳間書店)1991 ※全点確保
ジュニア文庫ブームに際して、文庫編集部が作ったものです。男女向け小説。
★1989 バンダイ・キャラクターノベルズ【終了と思われる】
現在までに小説が二冊、ゲームブック、メイキング(映画『ガンヘッド』)などを確認。
★1989 エニックス文庫 1997? ※詳細不明
ゲーム会社のエニックスが作ったシリーズで、アニメのノヴェライズ、『ドラゴンクエスト』のノヴェライズ、ゲームブックなどの他に、オリジナル小説が数点あります。
★1989 MOE文庫スイートハート(MOE出版)1991
少女小説のシリーズです。
MOE出版は、偕成社の系列会社で、雑誌『M511313〜14OE』(現在は白泉社が発行)などを作っていました。
終了とほぼ時期を同じくして、MOE出版は解散になり、MOE文庫の出版権は、偕成社に売却された形となっています。
★1989 いちご文庫ティーンズ・メイト(双葉社)1990
少女小説のシリーズです。SF作家、ミステリ作家など著名な人が、変名で書いていることで注目されています。
★1989 レモン文庫(学研)1996
少女小説のシリーズです。
★1989 (双葉ペパーミント・ゲームブック?
少女向けのゲームブックと思われます。1冊確保。
★1990 パンプキン文庫(ソノラマ)1990
朝日ソノラマがホラー・オリジナル小説のシリーズとして作ったもの。短命でした。
★1990 大陸ネオファンタジー文庫(大陸書房)1992
オリジナルのファンタジイシリーズです。大陸書房の倒産によって、必然的に廃刊。
★1990 大陸ファンタスティック・アニメーション・ノベル ※単独?
大陸書房が作った映像作品のノヴェライズ。1冊確保。
★1991 スーパーファンタジー文庫(集英社)2001
コバルトに対して、男の子向けの文庫シリーズです。
★1991 講談社X文庫ホワイトハートシリーズ(講談社)【存続】
ティーンズハートの読者層が下がってしまい、小学生ぐらいにまでなっていったので、もっと高い年齢層を狙った新シリーズ。
★1991 パレット文庫(小学館)2006
少女小説のシリーズとしてスタートしましたが、途中からBLに路線変更しました。
★1991 ハヤカワ文庫ハィ!ブックス(早川書房)1992
ジュニアに入れていいのか迷うところですが、早川が若年層向けに作った小説誌「HI!」が母体になっています。
★1992 小学館スーパークエスト文庫(SQ文庫)2001
ノヴェライズを中心に発足しましたが、オリジナルでもいくつかの作品があります。主に男の子向け。
★1992 コバルト文庫ピンキーシリーズ(集英社)1998
コバルト文庫がファンタジイ中心になり、恋愛小説を書いている作家の仕事がなくなったため(と言われています)、作られたノヴェライズ中心のシリーズ。
★1992 角川ルビー文庫(角川書店)【存続】
少女向けのシリーズです。やおい(現在のボーイズラブとまあ、ほぼ同じ)を初めて採り入れたと思われますが、当初は少女小説とやおいの混交したシリーズでした。
★1993 電撃文庫(メディアワークス)【存続】
角川書店から分裂したメディアワークスが作った、男の子向けの文庫。
★1993 キャンバス文庫(小学館)2005
パレット文庫より高い層を狙った少女小説で、講談社でいうとホワイトハートに当たります。2000年代に休刊。以降2005年まで霜島ケイさんの「封殺鬼」シリーズだけを出していました。「封殺鬼」は、ルルル文庫で続いているようです。
★1993 ログアウト冒険文庫(アスキー 発行アスペクト)1996
主に男の子向けのシリーズ。オリジナルも精力的に発行しましたが、最終的にはノヴェライズに絞られています。その後のアスペクトの文庫への移行は、まだ調査していません。
★1993 MIT文庫(ポプラ社)
折原みとからレーベル名を取った可能性のある(事情不詳)少女小説の文庫シリーズです。
★1993 (ナポレオン文庫)(二見書房)
若い読者向けのアダルト文庫。ボーイズラブを外すなら、こちらも外すべきでしょうが、扱いは微妙なところです。とりあえず三稿まで
★1994 電撃ゲーム文庫 ?
主にTRPG関係のレーベルですが、小説がある、という情報があります。
★1994 セレクト・パレ文庫(小学館)1995
3点確保。工藤夕貴の小説、斉藤由貴、小林深雪のエッセイ。
★1995 徳間AM文庫(徳間書店)
アニメージュ文庫が事実上、小説の新刊発行を止めたため、新たに創設された文庫。ノヴェライズです。非常に短命でした。
いくつかの文献に「徳間AMキャラ文庫」とあるのは、ボーイズラブの文庫で、別物です。
★1995 ゲーメストZ文庫(新声社)1996
未調査です。
★1996 竹書房ガンマ文庫(竹書房)1997
少年向けのレーベルですが、詳細は調査中です。
★1996 サークル文庫(発行:星雲社)1998
少年向けの、束の厚いシリーズでした。
★1996 ファミ通ゲーム文庫(アスペクト)
調査中。
★1997? ログアウト文庫 ?
調査中
★1998 ファミ通文庫(アスペクト→エンターブレイン)【存続】
ログアウト冒険文庫の後を継いで、オリジナル小説中心に、主に少年向けに創刊されたシリーズです。いくつかの文献に「ログアウト文庫」というものが途中にあったとされていますが、ログアウト冒険文庫、あるいはファミ通ゲーム文庫との混同である可能性があります。詳細は調査中です。
★1998 ソノラマ文庫NEXT(朝日ソノラマ) ?
ソノラマ文庫よりも高い年齢層を狙った? シリーズですが、短命に終わったようです。
★1999 ソニー・マガジンズ文庫 AXシリーズ ?
ノヴェライズ中心ですが、山本正之「銀河熱風オンセンガー」などもあります。私も誤解していたのですが、いくつかの文献に「AX文庫」とあるのは、まちがいです。
★2000 集英社スーパーダッシュ文庫(集英社)【存続】
スーパーファンタジー文庫の後を継ぐ形で作られた少年向け文庫。詳細は調査中。
★2000 富士見ミステリー文庫(富士見書房)2009
富士見書房が「広い意味でのミステリー」を標榜して立ち上げたレーベル。当初はミステリーのレーベルのはずだったが、現在ではよく分からないものになっています。
★2001 角川ビーンズ文庫(角川書店)【存続】
少女向け文庫。詳細は調査中。
★2001 白泉社my文庫(白泉社)
「広い意味でのミステリー」を扱う文庫。休刊中の模様。
★2002 MF文庫J(メディアファクトリー)
少年向けの文庫。ノヴェライズ、ファンタジイなど。
※遺漏がありましたら、お知らせください。
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