小判鮫のような人生
これまでの仕事 その3〔'91〜'〕
書いた日 01/03/17
●『ガイバー』ふたたび 仕事のほとんどなかった時期に、突然高屋良樹さんからお話があったのが、『強殖装甲ガイバー』イメージアルバムの作詞でした。
ちなみに、このCD、まだ売ってます。アニメイトで私は見ましたし、今でも月に数枚売れた印税が入ってくるんです。
で、私に声がかかったのは、仕事がないんで同情して下さったのかな、なんていう失礼なことを考えていたんですが、後できいてみたらそういうことはご存じなかったそうです。これをやるなら私だ、と思われたのだそうで。『ガイバー』は単純なヒーローものだけの作品ではないので、アルバムも特撮ヒット曲集のようにではなく作りたい、というときに、そういう面が分かるのはこいつだろう、と思った――と言うんですね。これほど光栄な話はありません。いちばんわかりにくい所が分かる、と言われるのは。
もちろん高屋さんは、特撮ファンでもありますから、ヒット曲集大好きです。私も好きです。『宇宙刑事シリーズ』なんか、良かったですね。
だからこのアルバムにも、「ガイバーIのテーマ」が入れてあります。正統なヒーローソングとしての表看板です。実はこれがいちばん楽しかったんです(^^)。
ただ、それでは拾いきれないものも表わしたい、と思われたときに呼んでもらえたわけで、私からすると、表看板は表に立つべき方にお任せするのが、あらゆる意味で正しいと思うので、こういう呼ばれ方にしかならない。それが私の役割だ、と思っているんですね。なので、役割を果たすことに徹しております。
作詞したのは、深町晶、瀬川瑞紀、村上、ガイバーI、ガイバーIII、クロノス、あとアプトムのテーマの七曲。それぞれ深く話し合っていたので、何を描けばいいのか、はかなり分かっていましたが、作詞は難しかったですね。小説は散文ですから。
作曲は、川村栄二さん。この後で、『仮面ライダーZO』などをやられて、押しも押されぬ、という感じになられましたが、『仮面ライダーBLACK RX』の主題歌を聴いた高屋さんが、この方にお願いしたい……という希望を出されました。打ち合わせにスニーカーで現われるフットワークの軽い方で、あ、音楽の人だな、と。この頃私、身なりにまるで構わなかったんで、ちょっと恥ずかしかったですね。今は作家っぽくしてます。
で、打ち合わせのとき、実写でアメリカ映画になった『ガイバー』のサントラデモテープとか、いろいろあったんですが、川村さんは聴きたがって持って行かれて、で、私は、あ、この方とはお仕事しやすそう(生意気!)と思ったのでした。そういうのがあると邪魔だから、という人もいると思うんですが、私も参考になるものはできるだけ見聞きするほうなんで。
それにしても、作詞は素人です。川村さんも困ったんじゃないかと思うんですが、一から教えて下さいました。このフレーズの出だしの音はア行で始まらないといけないとか、ここでは同じ言葉を繰り返したほうがいい、とか。手がかかって大変だっただろうと思うのですが、その手間を惜しまないんですね。何度もFAXとデモテープによるイメージをやりとりして、高屋さんもチェックを入れながら、作っていきました。たぶん、誰も不本意ではなかった仕事だと思います。予算は少なかったので、楽器編成は弱いですが。
レコーディングは、高屋さんは連載から離れられないので、私と徳間の編集者が主に立ち会いました。と言っても、ほとんどやることはないんですが、勝手にはやりませんでした。
川村さんは、スタジオの雰囲気を明るく保ちながら、びしびしと仕事をされていました。一曲、川村さんはこうしたい、というのを、高屋さんや私もかな? これはこうのほうがいいと思うんですが……とおそるおそる言ったことがあります。川村さんは少し考えて、いきなりスタジオの床でがーっと楽譜を書いて、それをすぐミュージシャンの方々が演奏され――いやー、すごいなあ、と思ったものです。先に演奏を録って、別なスタジオで歌を一曲ずつ録って行きましたが、やっぱり終始雰囲気がよかったのは、川村さんの能力でした。
なお、このアルバムの『クロノスのテーマ』には、バックコーラスとして私、徳間の高屋さん担当・Sさん、川村さん、ディレクターの松本さんの声が入ってます。
●'93 『小説モルダイバー』アニメージュ文庫
三年空いて、ぽこっ、と来た仕事です。いや、いろいろ前段階はあって、脚本を書いた中村学さんが、小説を書かないか、とずっと言って下さっていたんですが、二転三転して、結局アニメージュ文庫から出ることになったんでしたっけ。
とにかく、お話は前からあったので、いろいろ考えていました。この頃、長篇がかけない病でもあり、コミカルな作品なので、中編三つにしてネタで勝負しよう、とか。
残念なのは、打ち合わせがほとんどできなかったことです。
これは、後で自分がアニメに関わってみて、納得したんですが、アニメを作っている最中の監督というのはとにかく忙しい。とても、関連の全てまで見ていられない状態です。だから、直接の打ち合わせは最初の一回だけ。言われたのは、「未来(ヒロイン)の日常を出して欲しい」、ということでした。
あとはもう、任された形になって、不安はあったんですけれど、楽しく書いて、チェックもあまり入りませんでした。レトロなメカのコレクターと変身美少女が戦う、という設定ですが、アニメではスペースシャトルなどを盗んでいるのを、こちらはちょっとマクロなのが書けないので、クレイ1(スーパーコンピュータ)とかLPのオーディオとか、そういうのでやりました。日本クレイ社に電話をしたら、すぐにパンフレットを送って下さいました。あとオーディオメーカーのラックスも。たいへん助かりましたが、お礼に本を送ったら、返事はなかった(笑)。まさかこんなバカな小説に使われるとは思わなかったんじゃないでしょうか。
これの第一話は、サイバーパンクを中心としたSFのパロディというか駄洒落で、「たったひとつのサイダー館」とか「モナリザがオーバードライブする」とか、そういうくだらないもんです。第二話が『青銅の魔人』の冒頭を引用して始まり、第三話でちょっとシリアスにしめる、というもの。好評ならば続けて出すというので、いくつかネタを考えていたんですが、アニメのほうがちょっと難しい状況になったこともあって、一冊で終わりました。北爪宏幸監督には好評だったみたいです。
この本で、主人公の女の子を、何の疑問もなく「ヒーロー」と書いてしまったら、担当のYさんが気づいて傍点を打ちました。それを見て、ああ、私は少女でも「ヒーロー」と考えているんだな、というのが分かって、最近は「少女ヒーロー」を標榜しております。
●'94〜'95 『戦−少女イクセリオン(上下)』角川スニーカー文庫
そういえば、『モルダイバー』からこれの頃、私はさる専門学校で、作文の教師をしていました。小説の、ではありません。コンピュータの専門学校なので、ビジネス文書やテクニカルライティングの基礎をやってました。けっこういいかげんな教師でしたね。自分でも知らないことを教えてるし(笑)。学生が、あまりに貧乏でずっと二日酔いの私(当時は飲んでたんです)に同情して、ずいぶん本を買ってくれました。ありがたいですねえ。みんな、元気かな。
で、この『イクセリオン』も、中村学さん経由で来たお仕事です。この作品は、ラジオドラマ(この手のドラマはCD化が前提)、コミック、OVA、そして小説と多面展開するもので、まあ、メディアミックスですね。中村さんはドラマの脚本を書いていて、小説のほうはプロデュース的な位置に、アニメージュでもお世話になった池田憲章さんが入っていたので、私に、という話になったようです。
で、事情は忘れましたが、中村さんが構成案を立て、それに沿って書くというものでした。これが実は大変だったんですね。ひとのプランで書く、というのが。どうしても感覚の違いがあって、うまく理解できなかったのです。
このとき初めて、平野俊弘(現・俊貴)監督にもお会いしました。初対面の印象は、悪い人ではないんだけど、何もしゃべってくれないので困ったな、というものでした。後で分かるんですが、監督は、やや人見知りの所があったようで、また、私に対してというより、小説に対してどういうオーダーを出していいのか、分からなかったみたいなんですね。分からないときは「分からない」、って言っちゃう方で、後になるとその率直さが信頼できるということになったんですが、当時は私も話をつかみかねていて、自分で暴走するタイプでもないので、どうしようかなあ、と途方に暮れました。
また、主人公の女の子が、「ふつうの高校生」という設定で、これがイクセルという知能を持ったメカを装着して敵と格闘する――そういう話なんですが、さあこれが分からない。ふつうの女子高生、という感覚が、まったく違うんです、向こうとこっちとで。しかも私、ふつうの女子高生が化け物みたいな敵と格闘する、というのが分からなかった。あとでアニメを見て、多少分かりましたが。
間に立った中村さん、編集のTさんも困ってましたけど、ふつうの女の子ってこんな感じですか、とサンプルの会話を書いてみたり、平野監督の『イクサー』シリーズを観て考えたりしながら、しかしメカもアクションも軍隊も苦手だから……と悩み抜いて書いたのでありました。
結局、監督に満足のゆくものではなかったんで、これは心理的に借りを作った気持ちになって、いつか返せないか、と思っていたのが、『吸血姫美夕』の脚本を引き受けた動機でした。そのときに、今度は監督ともよくお話しできましたが、この『イクセリオン』の小説、監督はもちろん不満ですが、周りの女性には割合好評だったそうで、それが『美夕』を依頼した理由の一つだったそうです。
●'96〜'97 『強殖装甲ガイバー』1:リスカーの挑戦 2:第三の影
徳間AM文庫
これをやっているときに、専門学校をやめて、文筆専業になりました。
一つには、このシリーズがかなり長く続く予定だったことがあります。それで全力投球するには、兼業ではしんどい、と。あと、どっちにしても専業にならないと、作文の添削をやってるだけで時間が過ぎてしまう、というのもありました。小説が書きたかったんです。
で、……この本のいきさつは、複雑過ぎて忘れちゃったんですが、とにかくまた、高屋さんからのご要望で、今度はガイバーを正伝として最初からやっていこう、という話で来ました。
数年を経て、アニメージュ文庫は頭打ちになっていた……のかもしれません。それで、アニメージュ文庫をリニューアルして再出発する、その柱の一本、ということでした。
ところがこれ、こちらも覚悟を決めた割には、話が二転三転しました。どの部署で扱うか、が徳間の内部でいろいろあったみたいなんです。で、アニメージュ編集部から、新しいセクションでやるとなり、それがまた変わって結局、徳間文庫(小説のほうなので、アニメージュとはセクションが違います)の管轄になり、一巻が出るまでに、担当者が確か五人変わったんじゃなかったかな。
こちらは、高屋さんとはもう、私的なおつきあい(電話で話すぐらいではありますが)になっていたので、内容は、突き詰めて直接に話し合っていました。ただ、そういう内部のあれこれがしばらくかかって、ずいぶん長いこと、一巻に取り組んでおりました。結果として、最初の原稿は「少女小説の読み過ぎ」(高屋さん)と言われていたのが、びしっと原作に忠実に直せたりしたので、できはよかった(当社比)んですが、ノヴェライズにそんなにかけていては経済が破綻します。死ぬかと思いました。
えーとこの頃は、ムックや何かの手伝いでどうにか生きながらえていたのでしたね。また、実は一巻がようやく出ると思ったら、徳間の事情で発売日が直前にすっ飛ばされ、青くなっていたときに、綾辻行人さんが『黒ノ十三』にお声をかけて下さって(これは後で書きますが)、そこから短篇への道が開けた、とか、いろいろありました。
閑話休題。内容のほうは、高屋さんが、『ガイバー』原作の最初のほうは、描き慣れないこともあって物足りない部分があった、それを細かく拾っていきたい、ということで、綿密な打ち合わせをして、進みました。こちらも、いつも志としてはあるんですけれど、オリジナル小説にクオリティで負けたくない、というのがあって、オリジナル並みに設定だの資料だのを揃えて、やりました。担当の誰かが、続く限り何巻でも続けたいと言ったので、冒頭から第一部のラストを見込んだプロローグにして、最初は山田正紀さんのタッチでできないか、とか、とにかく力が入っていました。
小説なりの付加価値、というか読者サービスとして、原作には登場しないゾアノイド(まあ、怪人と思って下さい)を出す、というのも高屋さんが言い出したことで、こちらが性能などを設定して高屋さんがデザインを起こすという、考えてみたらノヴェライズではめったにないやり方になったり。本文イラストは、高屋プロの鈴木直人さんが描かれましたが、この方も真剣で、「この建物のイメージはどういう感じですか」とかいう話になる――もう、ノヴェライズとしては最高の環境下にある仕事でした。
私、かなり自信を持っているのですが、それは、ノヴェライズなのに小説家のほうへファンレターが来た、というせいもあります。これはびっくりしましたが、原作のおまけではない小説として認知してもらえた、と自惚れております。
ただ、売れ行きのほうは……私が貧乏神なんじゃないか、と思ったくらいで、まあいろいろ徳間の事情もあるんですが、二巻であっさり終わってしまったのでした。
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